★★★☆☆ 著者:吉村萬壱 出版社:早川書房 定価:1785円 出版年月:2005年5月 ボリューム:441P
「テロリンを殺せ!」 ラジオからは戦意高揚のメッセージが四六時中流れ出す。 テロリンっぽい子どもをいじめるテロリンごっこが流行する。 テロリンっぽい行動をした奴は民衆のリンチでぶち殺される。 いつ終わるともわからぬテロリストの襲撃に、 民衆は疲弊し、次第に狂気の度合いを高めていった。 肉体労働者の椹木武は病気の妻子を養うため、 愛人を売春宿で働かせて稼ぎを搾取していた。 小柳寛子は椹木のために、狂った客たちに弄ばれ続けていた。 やぶ医者の斎藤良介は、今日も手術に失敗して一人を殺した。 麻薬密売人の土門仁は浮浪者たちを薬漬けにしていた。 素人画家の井筒俊夫は、売春宿で抱いた小柳のあとを尾け回していた。 そして遂に最大級のテロが発生した。 国家はテロリン殲滅の大号令を出し、 地上最強の武器「神充」を確保せんと、「地区」へ志願兵を送り込んだ。 椹木、小柳、斎藤、土門、井筒、 五人はそれぞれの思惑から「地区」へと向かう。 しかし「地区」で待ち受けていたのは…… 超極限状況下における人間の生と死を、美しくかつグロテスクに綴る、 芥川賞受賞作家渾身の破壊文学。 (amazon.co.jpより)
ボクらのヴェトナム、同時多発テロ。 著者なりに解釈した本だと思ってました・・・ 序盤から中盤、日本を連想させる「この国」の惨状。 同時多発テロがモチーフだと思ってました。 縮れ毛、浅黒くてひょろ長いテロリン ⇒ ビン・ラー○ィン?
でも、「地区」で登場人物を待ちうけているもの・・・ それはボクのちっぽけな想像力を超えていました。
意味不明、正体不明のモンスター、神充。
著者は何を書き現したいのか、何を伝えたいのか。 読者の数だけ解釈があるように思います。
ボクは、テロや戦争云々を越えた、反文明・反理性の気配を感じました。 人間の思考、志向に敏感に反応する神充。 荒涼として救いのない世界観。 「この国」が滅ばない理由は、かなりの皮肉です。
解釈困難な描写・感情移入など拒絶する登場人物、 厚さのわりに重~い1冊。
でも、この時代に生まれたからには、 読まずに済ませられない1冊だと思います。
amazon.co.jpでcheck! ⇒
スポンサーサイト
テーマ:ぐっときた本 - ジャンル:本・雑誌
|