★★★☆☆ 著者:三枝和子 出版社:講談社(全2巻) 上巻⇒定価:1995円 出版年月:1999年1月 ボリューム:378P
桓武天皇、圧倒的な人間の迫力 [薬子の変]の藤原薬子。 東宮を恋慕する母と娘との宿命、宮中の権謀!
いまの帝(桓武)が4年前即位なさったとき父種継は参議に抜擢され、 興奮して口走ったものだ。 「さあ、わしにも運が向いて来た。これからは娘を入内させねば……」 薬子にはすでに縄主が通って来ていた。 しかしいまの帝は大変な精力の持ち主で、身辺に侍っている采女たちには、 昼間から下袴なしで白の表袴だけの簡略な服装をさせていらっしゃると聞く。 気持ちが動いたとき、直ちにどこででも男と女のことをなさるためだ。 「お気に召せば、臣下の妻でも、お構いなしらしい」 そして暗に、縄主との関係は適当に切りあげるように仄めかした。 薬子は縄主が特に好きというわけではない。 16歳のとき通ってきた男を同じ藤原式家の一族として、 ふさわしい婿と周囲が認めた。それが今日まで続いている。―― (amazon.co.jpより)
平安初期、陰謀渦巻く宮廷を生きぬく女独り。 父・藤原種継暗殺事件に始まり、 早良親王謀反、伊予親王謀反、薬子の変・・・
「陰謀を企んでいる」、「呪詛を試みている」 そんな根拠の無い告発で地位を負われ、命すら奪われる時代。
一方で、出世のため帝に自らの妻を差し出す高級貴族たち。 藤原継縄の妻、百済王明信は桓武天皇の寵妃として政治にも関与。 平安版ポンパドュール夫人。
そんなドロドロの時代の中、 藤原式家の柱として、平城天皇の支えとして、力強く生きる薬子。 彼女と関係をもつ平城天皇、薬子の娘も妃として入内させてます・・・ まさに、親子ど○ぶり。
相次ぐ陰謀で他氏を蹴落とし、勢力を増す藤原北家。 当主は策謀家の内之麻呂。薬子との腹の読み合いは一級の政治ドラマ。
序盤の大帝・桓武天皇との意地の張り合いも面白いですが、 後半、ジリジリと追い詰められていく式家、薬子の焦燥が光る。 スジを読みとおす政治センスを持ちながら、哀しいかな女の身。 一つ、また一つと駒を失っていく薬子・平城上皇陣営。
愛する者を守るため、薬子が採った最期の手段。 胸に詰まるエンディングです。
amazon.co.jpでcheck! ⇒
スポンサーサイト
テーマ:歴史・時代小説 - ジャンル:本・雑誌
|