評価:★★★★☆ 著者:荒山徹 出版社:文藝春秋(文庫版あり) 文庫⇒定価:580円 出版年月:2008年6月
秀吉の半島出兵による戦乱の中、両親をなくした朝鮮の少女「たあ」。 しかしその後「たあ」の心の支えとなったのは 日本の武将・三木輝景だった。 輝景へのサラン(=愛)を抱きながら、「たあ」がたどる数奇な運命は―。 愛と憎しみ、そして捨てられぬ「意地」を描いた荒山徹待望の作品集。 (amazon.co.jpより)
サルの貌をした権力者の侵略により、運命の転機を迎えた人々の物語。
と言っても、イラク戦争ではなく朝鮮出兵がテーマ。
秀吉に深い怨みをこめ降倭となったものの、 結局朝鮮社会に同化できないサムライを描いた『何処か是れ他郷』、 日本の血を恥じる息子との冷ややかなやりとりが印象的。
身分制への恨、朝鮮人被虜返還請求から生じる悲劇と、 『柳生薔薇剣』と相通ずるものがある『故郷忘じたく候』。 朝鮮身分社会への復讐のため、 美鳥、空へと舞うエンディング。 凄艶の一語に尽きます。
そして、 山田風太郎へのオマージュ、『サラン 哀しみを越えて』。 自分の指で魔界衆を召喚するあの人へとつながっていきます。 こんな哀しみが隠されてたわけね。
いずれの掌編も秀逸。
ただ、惜しむらくは、『魔風海峡』や『十兵衛両断』に見られた 突飛な展開、エログロ描写はなりを潜めています。 この点は『柳生薔薇剣』と一緒。
次回作(来年になるのかなぁ)は、激しい忍法合戦なんかを期待してます。
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テーマ:歴史・時代小説 - ジャンル:本・雑誌
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