★★★☆☆ 著者:朱川湊人 出版社:角川書店 定価:1470円 出版年月:2005年12月 ボリューム:285P
昭和三〇年代。 当時私は東京の下町で母さまと姉さまと三人、 貧しいながらも仲むつまじく過ごしておりました。 姉さまは、抜けるように色が白く病弱で、 私とは似ても似つかぬほど美しい人でしたが、 私たちは、それは仲の良い姉妹でした。 ただ、姉さまには普通の人とは違う力があったのです。 それは、人であれ、物であれ、 それらの記憶を読み取ってしまう力でした…。 小さな町を揺るがすひき逃げ事件、 女子高生殺人事件、知り合いの逮捕騒動… 不思議な能力を持つ少女が浮かび上がらせる事件の真相や、 悲喜こもごもの人間模様。 現代人がいつの間にか忘れてしまった大切な何かが心に届く、 心温まる連作短編集。 (amazon.co.jpより)
バブルな昭和、戦の昭和、モダンな昭和・・・ 色んな昭和はあったけど、こんなノスタルジックな昭和ははじめて。 お化け煙突、小塚原のコツ通り、「若いおまわりさん」・・・ 古き昭和を想起させるアイテムの数々。
その人がかつて体験したことを見てしまう能力をもった姉、 姉への憧れ、愛情豊かに物語を紡ぐ妹。 彼女たちを見守る母、友人、警察官ら。
高度経済成長を迎えた日本、グングングングンと日々伸びて行く大木。 豊かになっていく社会の中でも、 物理的な貧しさ、精神的貧しさから逃れられない人々。 そんな社会のわくらばたちと出逢い、能力ゆえに姉が見てしまう「真実」。
能力を使えば自らが受けるダメージを知りつつ、 あえて真実に迫ろうという姉。 汚いものも哀しいものもありのままに見えてしまう。
全5篇中、 心に残ったのは『流星のまたたき』、『追憶の虹』、『春の悪魔』。 幸せな時間は唐突に終わりを告げる。 そのとき、弱い立場にある者たちが見せる心の優しさ。 ひねくれ者の僕にもまっすぐ届いてきました。
そして、ラスト1行の見事。 じっくりと進んできたストーリーを絶妙に締めくくる一言です。 今後の作品に期待大の作家。
☆この作品を紹介しているブログ☆ 本読み日記さん 毒か薬さん さ・え・らさん
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