★★★★☆ 著者:平山夢明 出版社:光文社(文庫版あり) 文庫⇒定価:600円 出版年月:2009年1月
2006年度日本推理作家協会賞受賞作。 怪談実話のスーパースター・平山夢明の恐るべき結実。 絢爛たる第一短編集。 2007年版『このミステリーがすごい!』第1位。 怪談実話のスーパースターの鮮烈なる第一短編集。本年度推理作家協会賞受賞作を含む全8編。
凝視せよ。ここにあるのは宝石だ。 怪談実話でベストセラーを連発する著者による、驚くべき結実。 生理的嫌悪と、終わることのない暴力の果てに、 名状しがたい感動が待っている、異形の物語たち。 本年度推理作家協会賞を受賞した表題作含め8編を収録した、 世界最凶、天下随一の傑作短編集。 (紀伊国屋HPより)
実話怪談の名手が描く、奇妙な世界。 いや、奇妙と言うより、奇天烈と言うべきか。
現実世界と極めて近似した地獄。 もしかしたら明日の私かも知れないし、今日の誰かかも知れない。 「現実との架け橋」は保ちながら、 想像力の限界への挑戦とばかりにグロテスク散りばめられた異形の世界。
『C10H14N2(ニコチン)と少年―乞食と老婆』 有力者、警官、子供、末端まで腐りきった町。 そんな町にありながら只一人、人の善性を失わない少年。 彼が出会う乞食の老人。町中の暴力のターゲット。 魂の交流が始まるかと思いきや、もろくも崩れてしまう最後の良心。 きっかけは老人にあった2つの○ん○ん。 とんでもなくクダラナイことで、人の良心が崩壊する。 その瞬間の プチンって音が聞こえるような作品です。 まさに「にこちん」の話。
『Ωの聖餐』 この世で最も汚い場所。 正気を失わせる腐敗臭が充満した謎の小部屋で、 死体を処理する巨大な男・オメガ。 まず、この設定だけで魅力的。 オメガと関わることで (既に崩壊している)人生を粉々に砕いてしまう主人公。 しかも、きっかけはリーマン予想。 素数の法則性に翻弄され、後戻り不可能な地獄へ。
『無垢の祈り』 いじめ、家庭崩壊、生きながらにして地獄に落ちた少女ふみ。 彼女の願いが届くとき、現れる救世主は。。。
『オペラントの肖像』 人間への不信が貫徹された社会、オペラント社会。 意図的な行動は必然的に誤る⇒条件付けられた行動以外は排除すべき。 狂った前提の社会で、敵視されるのは芸術。 芸術を守ろうとした男を待ちうける皮肉な運命。
『卵男』 女ばかりを無残に殺す殺人鬼。レクターばりに一家言あり。 監獄に入れられても、まるでへこたれず。 彼に語りかけてくる独房の隣人の正体は。警察のスパイなのか。 まさかのどんでん返し、ちょっと予想がつきませんでした。
『すまじき熱帯』 渋谷で声をかけられ、熱帯へ。 人間を食い尽くす泥鰌、鰐、昆虫。 コンクリートジャングルなんて生易しいと思える地獄の熱帯。 そこに奇妙な王国を作り上げた男・呉。 軽い気持ちで迷い込んだが、切符は地獄への片道のみ。 原住民の使う奇妙な言語、日本語で表記したときの「すまじき」奇っ怪。 一つの壁を突き破った作品では。
『独白するユニバーサル横メルカトル』 地図です。 「ぼっちゃま」の悪行を語る地図です。
『怪物のような顔の女と溶けた時計のような頭の男』 人間解体工房。 人格を、アイデンティティをすりつぶす地獄の工場。 誰もが狂っていく中、正気を保ったまま淡々と作業をこなすMC。 彼の秘密、工場に送られてきた娼婦ココとの因縁とは。
どれも酸鼻、醜悪、地獄絵図。 ホラーや怪談が苦手な人には絶対オススメできない作品群。 ただ、『Ωの聖餐』、『すまじき熱帯』は 表現の到達点の一つといっても過言ではないような。 ただの怪談屋じゃねぇってことは確かです。
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